切原。立海のテニス部2年で、中等部時代から、何度か試合をしたことがある。実力は同じぐらいで、(負けず嫌いなところも似ている所為か)いつもいい試合をする。・・・が、今日の練習試合では、コイツと試合をしたくない。と言うか、本番でもしたくはない。もちろん、負ける気は無いが、コイツとは関わりたくないからだ。


「お、ー!久しぶりっ!」


しかし、立海に着いて早々、コイツと遭ってしまった。『会った』でもなく『逢った』でもなく、『遭って』しまった。つまり、コイツに『あう』ことは、事故に『遭う』と同じぐらい、嫌なことなんだ。


「赤也!久しぶりね。元気してた?」

「もっちろん。は?」

「私も見ての通り、相変わらず元気だよ。」

「よかったー・・・。と離れてから、俺はずっと心配で心配で・・・。」


そう言いながら、切原はを抱きしめ、頭を撫でる。・・・・・・・・・そして、がそんな行動を唯一振り払おうとしないのが、この切原なんだ。これが先輩の誰かなら、もすぐに離れようとするだろうが、切原には嬉しそうに話を続ける。・・・どころか、自身も腕を回している。


「何言ってんの?連絡はしてるじゃない。」

「それでも!毎日見てた昔とは、違うじゃん・・・!」

「はいはい、ありがとね。」


が一旦離れると、今度はが切原の頭を撫でた。・・・全く、本当にどんな関係かと問い詰めたくなる。しかし、俺はこの2人の関係を知っている。この2人は、ただの幼馴染。そう本人が言っていたから、間違いない。疑う俺の誤解を必死に解こうとしていたから、嘘ではないと思う。さらに、切原の口からも、そう聞いた。・・・これは、が半ば無理矢理言わせていたから、あまり信用できないが。とにかく、は氷帝に来る前は立海に居たのだから、それは事実だろう。
それでも、抱き合っている2人など、見たくはない。


「こら!赤也。何をしている?!」

「げっ・・・。真田副部長・・・。」

に挨拶するのもいいが、他の選手にも挨拶をしろ。」

「す、すんません・・・。どーも。」

「それのどこが挨拶か?!」

「ちょ、ちょタンマ!ちゃんとしますって!ちゃんと・・・!!ふー・・・。チーッス。」

「・・・まぁ、よかろう。すまんな、礼儀の知らない後輩で。」

「気にしちゃいねぇよ。」

「ほら!跡部さんも、こう言ってるじゃないっスかー!」

「黙れ、赤也!!」

「いてっ・・・!!」


このとき、俺はどれだけ真田さんに感謝しただろう。俺は、感謝の意味も込めて、ちゃんと挨拶をした。それに続き、鳳や樺地たち、それにも挨拶をした。


「こんにちは、よろしくお願いします。」

「「「「「お願いします。」」」」」

「お久しぶりです、真田先輩。今日は、よろしくお願いします。」

「うむ。こちらこそ、よろしく。・・・氷帝は、礼儀正しい選手が多いな、跡部。」

「そりゃ、ありがとよ。・・・ところで、部長の幸村は?」

「幸村たちは、コートに居る。俺が案内をするよう頼まれたのだが・・・。それを聞きつけた赤也が――。」


それから、また切原は真田さんに怒られそうになり、の後ろに隠れていた。・・・幼馴染だとしても、さすがに俺も我慢できなくなった。


「おい。お前は立海の選手だろ。と久しぶりに話したいのもわかるが、今日は氷帝のマネージャーとして、ここに来てるんだ。あまり、不必要に関わろうとするな。今日が練習試合ってわかってんだろ。」


俺が一気に言うと、の背中に張り付いていた切原が、そのままで俺の方に振り向き、ものすごく睨んだ。・・・だから、手離せよ。


「久しぶりに再会した幼馴染の間を引き裂く権利が、お前にはあんのかよ?」

「そうは言ってない。だが、今日は部活で来てるんだ。話すなら、休憩時間とか・・・。」

「今はどうせ、コートに向かってるだけだろ。」

「だから、今から試合をするっていうのに、親しげにするのはどうかと思うと、俺は言ってるんだ。」

「なんだよ、それ。どうせ、ヤキモチだろ?嫌だねー。男の嫉妬は。」

「は?!何、言ってんだよ?それは、そっちだろ?」

「ほら、。こんな器の小せぇ男はダメだ。俺は、絶対に許さねぇからな。」

「赤也!もう、離れて。日吉の言ってることは正しいよ。だから、あとで話すから。ね!」

「ちぇ。・・・・・・離れてやんない。」

「赤也。さんを困らせちゃいけないよ?」

「ゆ、幸村部長・・・・・・・・・!」

「幸村先輩!こんにちは、お久しぶりです!」

「やぁ、久しぶり。・・・さて、赤也を引き取ろうか。それで、跡部――。」


幸村さんが出てきて、切原はすぐにから手を離し、すごすごと立海側へ戻って行った。・・・相変わらず、コイツの弱点は、立海の先輩たちだな。
互いの部長同士が挨拶をしたり、話し合ったりしている中、が俺の所へ来た。


「日吉。さっきは、ありがとう。」

「別に。むしろ、邪魔したんじゃないのか?」

「ううん!そんなことないよ!今は氷帝の一員だもん。赤也と仲良くしてると、それが複雑になっちゃうから、この方がいいの。だから、ありがとう。」

「そうか。」

「うん。赤也は幼馴染だけど、今は日吉を100%応援するからね!」


氷帝のマネージャーとして、ではあるが、の中での俺:切原の割合が0:100で嬉しかった。
・・・まぁ、今日切原と試合になっても、が応援してくれるのならいいかと思えた。




***** ***** ***** ****** *****




今日は、立海で氷帝と練習試合をする。俺は、それが楽しみだった。だって・・・。


「お、ー!久しぶりっ!」

「赤也!久しぶりね。元気してた?」

「もっちろん。は?」

「私も見ての通り、相変わらず元気だよ。」

「よかったー・・・。と離れてから、俺はずっと心配で心配で・・・。」


そう言いながら、俺はを抱きしめ、頭を撫でる。
そう、俺が楽しみにしていたのは、俺のカワイイ、カワイイと会えるからだ。
も俺の背中に腕を回し、嬉しそうに答えてくれる。


「何言ってんの?連絡はしてるじゃない。」

「それでも!毎日見てた昔とは、違うじゃん・・・!」

「はいはい、ありがとね。」


は一旦俺から離れ、今度は俺の頭を撫でた。本当、が居ると落ち着く。
でも、今はこうして違う学校に通ってる。俺たちは幼馴染で、本当に小さい頃から、ずーっとずーっと一緒だったのに、中学を卒業して、が氷帝に行ってしまったから、すごく悲しかった。
もちろん、携帯の番号やアドレスは聞いたから、いつでも連絡はできるけど、お互い部活が忙しくて、なかなか会えない。だから、今日は本当に楽しみだった。
なのに・・・。


「こら!赤也。何をしている?!」

「げっ・・・。真田副部長・・・。」

に挨拶するのもいいが、他の選手にも挨拶をしろ。」

「す、すんません・・・。どーも。」

「それのどこが挨拶か?!」

「ちょ、ちょタンマ!ちゃんとしますって!ちゃんと・・・!!ふー・・・。チーッス。」

「・・・まぁ、よかろう。すまんな、礼儀の知らない後輩で。」

「気にしちゃいねぇよ。」

「ほら!跡部さんも、こう言ってるじゃないっスかー!」

「黙れ、赤也!!」

「いてっ・・・!!」


こんとき、俺はどれだけ真田副部長を恨んだだろう。
悔しそうにしている俺とは裏腹に、どこか楽しそうに氷帝の日吉が真田副部長に挨拶をし、それに続いて、鳳や樺地たち、それにも挨拶をした。


「こんにちは、よろしくお願いします。」

「「「「「お願いします。」」」」」

「お久しぶりです、真田先輩。今日は、よろしくお願いします。」

「うむ。こちらこそ、よろしく。・・・氷帝は、礼儀正しい選手が多いな、跡部。」

「そりゃ、ありがとよ。・・・ところで、部長の幸村は?」

「幸村たちは、コートに居る。俺が案内をするよう頼まれたのだが・・・。それを聞きつけた赤也が――。」


それから、また俺は真田副部長に怒られそうになり、咄嗟にの後ろに隠れた。
よし、これで真田副部長も手は出せない。さて、久々のとの再会をもう1度楽しもうとしていたら。またしても、邪魔が入った。


「おい。お前は立海の選手だろ。と久しぶりに話したいのもわかるが、今日は氷帝のマネージャーとして、ここに来てるんだ。あまり、不必要に関わろうとするな。今日が練習試合ってわかってんだろ。」


そう氷帝の日吉が一気に言った。あ〜ぁ、マジうぜぇ。俺はコイツが気に食わない。中学んときから、そうだった。なのに、はコイツが好きだとか言うし。コイツの前で、俺たちの関係は幼馴染だと、に無理矢理言わされたこともあった。本当、こんな奴のどこがいいんだか・・・とか言えば、に怒られるし、幼馴染だと言わされたときだって、本当は付き合っているとちょっと言おうとしただけで、マジで睨まれた。
それでも、俺はコイツが嫌いだ。だから、俺はにくっ付いたまま、思いっきり睨んでやった。そしたら、向こうの表情も、少し嫌そうになった。


「久しぶりに再会した幼馴染の間を引き裂く権利が、お前にはあんのかよ?」

「そうは言ってない。だが、今日は部活で来てるんだ。話すなら、休憩時間とか・・・。」

「今はどうせ、コートに向かってるだけだろ。」

「だから、今から試合をするっていうのに、親しげにするのはどうかと思うと、俺は言ってるんだ。」

「なんだよ、それ。どうせ、ヤキモチだろ?嫌だねー。男の嫉妬は。」

「は?!何、言ってんだよ?それは、そっちだろ?」

「ほら、。こんな器の小せぇ男はダメだ。俺は、絶対に許さねぇからな。」

「赤也!もう、離れて。日吉の言ってることは正しいよ。だから、あとで話すから。ね!」

「ちぇ。・・・・・・離れてやんない。」


結局、は日吉の奴の味方をする。でも、幼馴染として、こんな男と付き合うのは、断じて許せない!こんな短気で、冷たくて、何考えてんのかわかんねぇような、つまんねぇ男はダメだ。


「赤也。さんを困らせちゃいけないよ?」

「ゆ、幸村部長・・・・・・・・・!」

「幸村先輩!こんにちは、お久しぶりです!」

「やぁ、久しぶり。・・・さて、赤也を引き取ろうか。それで、跡部――。」


今度は幸村部長が出てきて、さすがに俺も立海側へ戻らなければならなくなった。・・・幸村部長には、本当に逆らっちゃあ、マズイからだ。・・・は、呑気に挨拶なんかしてるが。
そんなことはさて置き。跡部さんと幸村部長が話してる間、の様子を見ると、何やら日吉と喋っている。2人とも楽しそうに喋ってて、マジでは日吉が好きなんだなぁと思った。・・・ってか、日吉の奴ものこととなると、何考えてんのかよくわかる表情になる。お前も、が好きなんだろ?本当、わかりやすいぜ。
だけど、それをに言ったりしない。俺が許せるような男になるまで、邪魔し続けてやっからな!













切原くんとのこういうやり取りを書きたいがための、幼馴染&高校生設定と言っても過言ではありません!(笑)恋愛感情ではないけれど、友情以上に強い愛情(父性愛?)を持ってくれる異性の友達、という設定を書きたかったのです!

それにしても、切原くんはちょっと心配性すぎるかも知れません(笑)。たぶん、そこには日吉くんへのライバル心もあるから、なんでしょうが・・・。これで、テニス部外の誰かなら、切原くんも・・・・・・いや、逆に「なんで、そんな奴!!」と思うかも知れませんね(笑)。
要は、過保護な幼馴染です(笑)。

('09/11/14)